お知らせ

「生産性向上研修会・介護ロボット等展示会」開催レポート

update 2025/01/17

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ロボット、ICT(情報通信技術)といったデジタル技術を活用して生産性を向上させ、働きやすい職場づくりや提供サービスの質向上につなげていく…。こうした機運が介護現場で高まっていることを受け、2024年8月1日に「岐阜県介護生産性向上総合相談センター」が開設されました。岐阜県から委託を受けた公益財団法人 介護労働安定センター岐阜支部が運営し、介護事業者に対して個別相談や情報提供、専門家の派遣などを行っています。
12月11日には同センターが企画した「生産性向上研修会・介護ロボット等展示会」が岐阜市のワークプラザ岐阜で開かれ、介護施設の管理者など多くの人が訪れました。


〈展示会〉

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会場となったワークプラザ岐阜の大ホールには、介護ロボットメーカーや介護システムベンダーなど10社の最新機器が展示されました。このうち、自動車部品メーカーが開発した電動アシストスーツは、衣服のように身につけるだけで介護職の腰の負担を軽減できるというものです。担当者は「メッシュ素材を採用することで、従来タイプよりも軽くて動きやすく、着脱も簡単。手軽に洗濯ができるのもポイントです」と紹介していました。また、オフィス機器メーカーが開発した見守りベッドセンサーシステムは、高精度の荷重センサー技術で利用者のベッド上の状態(起き上がり、離床をはじめとする動き、バイタル情報など)をパソコンやスマートフォンに表示してくれるもの。介護職員の負担を軽減するだけでなく、データに基づいた的確なケアが実現するため、利用者にとってもメリットが大きいといいます。
来場者は、出展企業の担当者から詳しく説明を聞いたり、実際に製品を体験したりして理解を深めていました。高山市から参加した介護職の男性は「今日得た情報を職場に持ち帰って、しっかりと共有したい。介護ロボットやICT機器は種類が多く、選択が難しいので、相談センターを活用して、自施設に合ったものを取り入れていければ」と話していました。


〈研修会〉

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「岐阜県介護生産性向上総合相談センター」の専門家派遣事業の専門家としてご活躍されている「& Consulting Firm (アンドコンサルティングファーム)」代表・沖本崇さんを講師に迎え、「介護現場の生産性向上とは」と題した研修会が開かれました。沖本さんは、介護現場における生産性向上の取組みは必須と指摘。岐阜県は介護現場のICT・介護ロボット等の導入率が全国平均よりも高いというデータを示し、「それでも導入率は3割強。まだまだ普及しているとは言い難い」と語りました。その上で、生産性向上の真の目的は介護サービスの質向上だと強調。さまざまな事例を用いながら「経営者が現場ニーズを把握することが大切。補助金ありきの購入、あるいは表面的な業務削減効果だけに着目するのではなく、現場のリーダーを巻き込みながら活用イメージを練って成果につなげてほしい」とアドバイスしました。
研修会の後半には、61名の参加者が数名ずつのグループに分かれ、職場の課題などについて話し合う交流会も行われました。揖斐郡大野町から参加した介護職の女性は「悩んでいるのは自分たちだけではないと分かりました。他の事業者さんの取組みからヒントもいただけたので、参加してよかったです」と話していました。


担当者からのメッセージ

岐阜県介護生産性向上総合相談センター
(委託先:公益財団法人 介護労働安定センター岐阜支部)
支部長 志水茂さん


介護現場に「生産性向上」という言葉を持ち込むことに違和感を覚える方がいるかもしれません。ケアの時間を短くする=サービスの低下をイメージしてしまうのでしょう。でも、「生産性向上」を「今のやり方、環境をより良く変えて、本来業務である利用者様と向き合う時間を増やすこと」だと置き換えてみてください。そして、その手段の1つに介護ロボットやICT機器の導入があると考えていただくと、しっくりくると思います。一方で「これを導入すれば、必ずうまくいく」という万能な製品はないのも事実。そこで、2024年8月に開設された岐阜県生産性向上総合相談センターでは、それぞれの事業所の実情に合わせた製品選びから導入、活用までをワンストップでサポートしています。移乗支援機器や排泄支援機器などの介護ロボットについて、2週間から1カ月程度の試用貸出しも行っていますので、まずはお気軽にご相談ください。

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介護現場の生産性向上に関するご相談

■岐阜県介護生産性向上総合相談センター(介護労働安定センター岐阜支部内)
TEL:058-201-3288(平日9:00〜17:00)
メール:gifu@kaigo-center.or.jp


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「令和6年度 ぎふ・いきいき介護事業者 認定証授与式&記念講演会」開催レポート

update 2025/01/10

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介護人材の育成や職場環境の改善に積極的に取り組む事業者を県が認定・公表し、応援する「ぎふ・いきいき介護事業者」認定制度。グレード1からグレード3までの3段階があり、いずれかの認定を受けると、各種補助金の優先採択や、認定制度のロゴマークを活用したPRができるなどのメリットがあります。2024年度は計23事業者が認定を受け(グレード1は1事業者、グレード2は4事業者、グレード3は18事業者。うち、新規認定は19事業者)、12月20日に岐阜県図書館 多目的ホールで認定証授与式が開かれました。


認定証授与式

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はじめに、県健康福祉部の丹藤昌治部長があいさつ。「介護の現場は慢性的な人手不足が続くため、人材育成や職場環境の整備を両輪で継続していくことが欠かせない。『ぎふ・いきいき介護事業者認定制度』でグレード認定を受けた事業者数は、本日をもって181となる。グレード2・3の事業者は引き続き上位グレード認定をめざし、最上位のグレード1の事業者は先進的なモデルになってほしい」と語りました。
続いて、認定制度の創設に関わった中部学院大学 人間福祉学部の飯尾良英学部長が来賓代表としてあいさつ。グレード1の認定を受けた大東福祉会の取り組みを紹介し、「今後は、職員の仕事とプライベートが相互に作用して質を高め合うワークライフ・エンリッチメントを推進していくことが大切」と話しました。
その後、会場に集まった参加者が見守る中、丹藤昌治部長から、それぞれの認定事業者へ証書が手渡されました。


記念講演会

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県中小企業総合人材確保センター 企業アドバイザーの大平聖子氏、社会福祉法人善光会 理事の宮本隆史氏を講師に招いた講演会が行われました。
「岐阜県における人手不足の現状と今後の対策」と題して講演を行った大平氏は、2015年から2020年までの岐阜県の人口推移をデータで示し「減少ペースが年々早くなっており、2050年には2020年の198万人から推計で61万人も減少する。一方で65歳以上の高齢者人口は増えるので、働き手1人あたりの“重み”が他府県と比べて大きい」と指摘。「介護人材の確保・定着の取組みにゴールはない。常により良い施策を考え、実施してほしい」とメッセージを送りました。

「介護現場の生産性向上の具体的な進め方」と題して講演を行った宮本氏は、介護職を経て、介護ロボット機器の管理アプリ「SCOP」の開発や、介護現場のDX化をサポートする民間資格「スマート介護士」の開設に携わった経験を持ち、現在はシンクタンク機能を有する株式会社 善光総合研究所の代表取締役社長も務めています。

宮本氏は「介護現場はどこも人手不足の問題を抱えている。介護サービスの事業特性や収益構造を踏まえると、生産性向上に取組む以外に解決策はない。ただ、介護ロボットなどの導入はあくまで手段。本当の目的は、職員の専門性やモチベーションを高め、介護サービスの質を向上させていくことだと理解する必要がある。経営層がありたい組織像やビジョンを描き、発信していくことが重要」と強調。さらに、自法人における機器の導入事例などを紹介し、「得られたデータをアセスメントに生かして、PDCAサイクルを回していくことがポイント。同時に、生産性向上に取組むリーダー職員の心理的安全性を高めることや、自立支援に係るアウトカム(成果)評価もぜひ推進してほしい」と語りました。


グレード1を取得した事業者の声


◆社会福祉法人 大東福祉会

顧問理事 統括施設長 関根良一さん

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大東福祉会は、大垣市で特別養護老人ホームやグループホーム、住宅型有料老人ホームなど、総合的な介護サービスを展開している法人です。1996年の設立以来、人間性の尊重を理念に掲げ、施設に関わるすべての人たちの心を豊かにできる施設づくりに取り組んできました。その考え方は職員に対しても同様で、「働きやすさ・働きがいを高める新しいことを、法人として毎年1つは取り入れよう」という目標を立て、実践しています。介護ロボットやICT機器の積極的な導入、NISAを利用した資産形成の支援、フィットネスクラブの利用料補助などはその一例。直近1年間の介護職員の離職率は2.9%と、岐阜県内の離職率13%を大きく下回る数値が出たことも、そうした取組みが奏功したものかもしれません。
ぎふ・いきいき介護事業者のグレード1取得は、法人のブランディングにも大いにつながると期待しています。プレッシャーもありますが、認定にふさわしい事業者であり続けられるよう、職員と力を合わせてより良い職場環境づくりに励んでいきたいと思います。


岐阜県では今後も関係機関と連携しながら、「ぎふ・いきいき介護事業者認定制度」のさらなる普及に向けた活動に取り組んでいきます。

認定制度について詳しくはこちら