専門セミナー「精神疾患者への対応&先進的取組発表」開催レポート
update 2023/09/25
「岐阜県介護人材育成事業者認定制度」に取組む介護サービス事業者を対象とした専門セミナー(主催:岐阜県、運営:公益財団法人介護労働安定センター岐阜支部)が2023年8月21日(月)、ワークプラザ岐阜で開催されました。
今回のテーマは「精神疾患者への対応&先進的取組発表」。医療と介護、それぞれの現場で活躍する登壇者の話に、来場者・オンライン参加者あわせて約50名が熱心に耳を傾けました。
また、第1部の終盤では、参加者から寄せられた精神疾患者への対応に関する悩みや疑問に、講師がアドバイスする時間も設けられました。
第1部 基調講演「精神科領域の実際」
患者さんごとに適したアプローチを
いまいせ心療センター(愛知県一宮市)の精神科医師・鎌倉理人先生が臨床経験を交えながら、精神疾患の正しい知識について解説するとともに、そうした患者への接し方のポイントをアドバイス。「統合失調症から、うつ病などの気分障害、パーソナリティ障害まで、多岐にわたる精神疾患は、検査値に当てはめて診断名を判断できるものではなく、境界があいまい。また、治療はご本人のお話を丁寧に聞き取った上での薬物療法が中心になるが、疾患の重症度と治りやすさには相関性がなく、薬の効き方にも個人差があるため、患者さんごとに適したアプローチを探っていく必要がある。」と、個別対応・支援の重要性を強調しました。
患者さんの気持ちに寄り添い試行錯誤
鎌倉先生は「高齢の患者さんについては、医療と介護施設などの地域機関が互いに協力し合えるような体制を作っておくことも大切。介護職の人が認知症の患者さんに付き添って精神科を受診する際はぜひ、困りごとやこれまでの経過を整理し、ポイントを絞って情報を伝えてほしい。医療機関は病態の重症度に関わらず、状況や必要に応じて入院治療も受け入れてくれる。」と呼びかけました。その上で「認知症の方は、少し視点をずらした“変化球”のコミュニケーションを取ることが、時に薬物療法以上の効果をもたらすことがある。たとえば、ご本人のこだわりに配慮した声かけによって入浴拒否をしなくなったケースがあった。対応に正解はない。失敗してもいいので、その方の気持ちに寄り添いながら、トライ&エラーを繰り返してもらいたい。」と話しました。
第2部 介護事業者による先進的取組発表「介護ロボットの活用と効果」
社会福祉法人 浩仁会は揖斐郡大野町、揖斐川町に特別養護老人ホーム、地域密着型特別養護老人ホーム、ショートステイホーム、グループホームを運営しています。今回は先進的取組発表として法人を代表し、セント・ケア おおの(揖斐郡大野町)の施設長・木村裕亮さんが、法人施設で2015年から取り組んでいる介護ロボット活用やDXの取組みと、それらの効果を発表しました。
「介護ロボットにはさまざまな種類があるが、施設では見守り支援ロボット(センサーや外部通信機能を備えたロボット。転倒を検知し、自動で通報する機能もある。)を中心に活用を進めている。導入によって、ベッド周辺での転倒事故が激減。2022年度の骨折事故は0件になった。また、介護ロボットの導入と並行してDXを推進しており、ICT機器で介護記録をデジタル化したり、ビジネスチャットで職員間のコミュニケーションや情報共有を行ったりしている。DXは業務を効率化し、職員の時間的・精神的なゆとりを生み出した。得た時間は、利用者さんへの直接ケアや地域との交流に充てている。」と話しました。
木村さんは、介護ロボットの導入・定着のポイントとして、
・情報収集と分析(ロボットの種類、現場のニーズなど)
・費用対効果の検討(補助金も活用)
・目的を明確にした導入計画の作成
・導入前のお試し(メーカーなどに相談する)
・導入中の試行錯誤(マニュアルやルールの作成、研修の実施など)
・導入後の効果測定と改善
の6つを紹介。さらに「変化を恐れず楽しむこと、目標を持つことが大切。介護職の未来は、現場で働く私たち自身が行動しなければ変わらない。魅力ある職場をみなさんと一緒に作っていきたい。」と語りました。
社会福祉法人 浩仁会の取組みはコラムページでもご紹介しています。あわせてぜひご覧ください。
▼活用次第で現場が変わる!介護ロボットをチームの一員に
https://www.gifu-kaigo.jp/column/volume23.html
セミナーに参加した方々の感想 |
異なる2つのテーマだったが、どちらも学びがたくさんあり、有意義な時間になった。 精神疾患者の方への接し方について深く考えることができた。 病院受診に付き添う際のポイントなどを今後に生かしていきたい。 大変参考になった。もっとゆっくり聞きたかった。 介護ロボット導入への意欲がわいた。早速行動を起こそうと思う。 |