コラム Vol.24／岐阜県介護情報ポータル

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

医療法人仁寿会
理事事務局長大村浩司さん
「託児所ひまわり」責任者保育士石田麻衣子さん

「出産後、仕事と子育てを両立できるか不安」「近くに安心して子どもを預けられる場所があれば、もっと働ける」ーー。女性職員の声を生かし、介護老人保健施設「アルマ・マータ」の敷地内で事業所内保育所を運営しているのは医療法人仁寿会です。同法人のおふたりに、開設の経緯や事業所内保育所がもたらす効果などについて聞きました。

開設のきっかけは介護職員の声

仁寿会は「タジミ第一病院」を中核施設に、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、訪問看護ステーションなど計8つの事業所を多治見市内で運営する医療法人です。「家族を安心して預けることのできる病院、施設、人でありたい」という理念のもと、約340名の職員がそれぞれの専門性を発揮しながら地域医療・福祉に貢献しています。

当法人が21世紀職業財団の事業所内保育施設設置・運営等助成金を活用して、事業所内保育所「託児所ひまわり」を立ち上げたのは2007年のこと。それまでは、かつて看護学生寮だった空きスペースを使って、独自に病院職員用の小さな託児所を運営していましたが、ニーズの高まりに合わせて、全職員が利用できる託児所を新築したのです。当時、結婚や妊娠を機に退職する介護職員が多く、将来起こり得る人材不足に備えて対策を行うことは、法人としての急務でした。

「託児所ひまわり」の開設にあたって、大切にしたのは職員の声。全事業所にアンケート調査を実施し、子どもたちがのびのびと遊べるゆとりある空間づくりや、床暖房など設備面の充実に力を入れました。また、子どもたちの安全と保育の質を守るために、国の基準より多く保育士を配置しているのも特徴です。

育児休業後の復職率がほぼ100％に

開設から14年目を迎えた現在は、0歳から3歳未満まで17名の子どもたちをお預かりしています。月の保育料は1人1万円。岐阜県の補助金（岐阜県病院内保育所運営事業費補助金・岐阜県介護事業所内保育施設運営補助金）に助けられていますが、仮に子どもの数が定員の20名に達したとしても収支はプラスになりません。それでも、民間の保育所と比べて保育料を安価に設定しているのは、子育て支援の観点から少しでも家計の負担を減らし、働きやすい環境を提供したいという思いからです。

「託児所ひまわり」を開設してから、結婚や妊娠を理由とした介護職員の離職が大幅に減り、育児休業後の復職率はほぼ100％になりました。また、0歳から2歳の子どもを育てている若手の応募が増加。「ひまわりの存在を知って、ここで働きたいと思った」という声が多く聞かれるのは、私たちにとってとても嬉しいことです。彼らを温かく見守ってくれているベテラン職員にも目を向け、子育て支援だけでなく、仕事と介護の両立支援にも取り組むようになり、2017年には「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」の認定を受けました。事業所内保育所を開設したことによる最も大きな効果は、法人内で多様な世代の多様な働き方を支援しようという気運が高まったことかもしれません。今後も職員一人ひとりの思いやライフスタイルに寄り添える職場づくりに努め、個の成長を法人の持続的な成長につなげていきたいと考えています。

＜事業所内保育所を開設することで期待できる効果＞

結婚や妊娠を理由とした離職を防ぐ
若手職員の新規採用がしやすくなる
子育て中の職員のモチベーション向上
多様な世代の多様な働き方支援の気運が高まる
介護施設の利用者と園児の交流によるつながりの創出
事業所のイメージアップ

「託児所ひまわり」を利用している職員の声

アルマ・マータ
介護福祉士柴田未来さん

福祉系の専門学校を卒業後、アルマ・マータに入職し、この春から15年目になります。2週間ほど前、3人目の子どもが1歳になるタイミングで育児休業から復職しました。「託児所ひまわり」は職場の敷地内にあって、何といっても送り迎えが便利。子どもが体調を崩した時にすぐに駆けつけられる距離にいることも、親として心強いですね。上の2人もお世話になったので、長いお付き合いの先生が多く、家族に預けるような気持ちで利用させてもらっています。

私が3人の子どもを育てながら介護福祉士としてキャリアを積み重ねることができているのは、充実した子育て支援体制だけでなく、「みんなで支え合う」風土が職場にしっかりと根付いているからです。急に早退したり、お休みをいただいたりする時も、仲間が「困った時はお互い様だよ」という感じでフォローしてくれるので、とてもありがたいです。そんなアルマ・マータの魅力を次の世代に継承していくことも私の役割だと思っています。