岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。
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お話を伺った方
日建ヘルスメディカル株式会社
代表取締役 林芳弘さん
総務部 佐藤未来さん(左)
業務部 大野朋子さん(右)昨今、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく見聞きするようになりました。DXとは、最新のデジタル技術を活用して組織やビジネスモデルを抜本的に変革する概念を指します。 慢性的な人材不足の中、増え続ける介護ニーズに応え続けていくために、介護業界のDXは喫緊の課題です。昨今の新型コロナウイルスの影響も、DXの必要性を強く感じさせる契機となりました。今、介護現場に求められるDXとはどのようなものでしょうか。また、進めることでどのような効果が得られるのでしょうか。DXに積極的に取り組んでいる岐阜市の日建ヘルスメディカルを取材しました。
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デジタル化で実現したい未来を明確にすることがDXの第一歩
日建ヘルスメディカルは、医薬品卸売会社のアルフレッサ日建産業をルーツとする介護福祉事業者で、訪問介護、居宅介護支援、福祉用具レンタルなどの介護サービスを提供しています。
そんな当社がDXに着手したのは2018年のこと。アルフレッサ日建産業を経て入社した私は、特に訪問介護事業における情報の煩雑さや業務の非効率さを目の当たりにしました。管理スタッフは日々、利用者様やヘルパーとの連絡・調整業務に追われ、月末ともなれば事務所のデスクはいつも書類の山になってしまう。明らかに業務過多な担当者もいましたし、どんなに努力しても電話・口頭でのやりとりでは「今日の訪問時間を変更してほしい」「次回買ってきてほしいものがある」といった利用者様からのご要望にタイミング良くお応えできないことも多く、もどかしい思いを抱いていました。その課題を解決するためにはまず、介護記録をタイムリーかつ確実に指示伝達できるITツールが必要だと考えたのです。
ITツールの検討にあたって私が大切にしたのは、実際に業務に携わるスタッフたちの声を聞き、現場を巻き込みながら変革していくこと。その上で、1.既存の介護請求ソフトとの親和性、2.操作のしやすさ、3.カスタマイズ性を総合的に勘案し、「Care-wing(ケアウイング)」というソフトの導入を決めました。ITに不慣れなヘルパーに対する操作方法のレクチャーや、利用者様への説明など、導入時に苦労がなかったわけではありません。しかし、当社が介護記録のデジタル化によって得られた効果はそれらを凌駕するものでした。以下に主な効果をご紹介します。 -
<DX導入のメリット(日建ヘルスメディカルの場合)>
- 利用者様宅に設置させていただいたICタグにスマートフォンをかざすだけでヘルパーの入退室時間が自動入力され、指示内容も画面で随時確認できるようになった。
- 以前は訪問先で紙に手書きしていた介護記録がスマートフォンで簡単に入力できるようになり、ヘルパーの負担軽減につながった。
- ヘルパーが訪問先からリアルタイムで管理者に報告書を送信できるようになり、情報の伝え遅れや漏れが減った。
- 毎日のサービス実績がデータ化され、紙の書類からの転記作業や書類同士の突き合わせ作業が不要になった。
- サービス実績をもとに、ヘルパーの勤務時間の集計や給与計算が自動でできるようになった。
<導入前後の数字比較(日建ヘルスメディカル調べ)>
- 実施報告書の内容確認時間 300時間/月→120時間/月
- 実施報告書印刷に使用するコピー紙の枚数 6,000枚/月→0枚/月
- 実績入力時間 58時間/月→3時間/月
- 給与計算時間 15時間/月→3時間/月
「Care-wing」の導入後、DX推進への機運が高まった当社では、勤怠管理や年末調整、給与明細をクラウド管理できるソフトや、経費精算機能などを備えたグループウェアも段階的に導入しました。これにより、現場の業務効率化がさらに進み、時間外労働の削減と有給休暇取得率のアップが実現。また、書類提出や訪問スケジュール確認等のためにヘルパーが来社する必要がなくなり、「非接触」「リモート型」といったコロナ禍における新しい働き方への変化にもいち早く対応することができました。
DXと聞くと、ちょっと難しく感じる方も多いと思いますが、DXが実現した先にあるのは、より働きやすい環境・働きがいのある環境と、介護サービスの質向上です。実はこの視点が最も重要で、「デジタル化」を目的にしてしまうと現場を混乱させるだけになりかねません。「なぜデジタル化に取り組むのか」「何の時間を最大化したいか」を全スタッフと共有することがDXの第一歩。その上で、できるだけ多くのシステム会社と意見交換を行い、実際のオペレーションに合った最適なITツールを選んでください。答えはきっと、現場から導き出されるはずです。(林芳弘さん)
- ▲ICタグとスマートフォンを使ってヘルパーの入退室を管理
- ▲スマートフォンの画面に表示するアプリケーションも必要最小限に絞った
- ▲手書き中心だった管理スタッフの事務作業の多くがデジタル化された
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「ツールを導入して終わり」ではなく継続的に改善していく取り組みも必要
当社にとってDX推進の足がかりとなった介護記録ソフト「Care-wing」の導入にあたって最も腐心したのは、ヘルパーに対する操作方法のレクチャーでした。というのも、当社のヘルパーは50代以上が中心で、慣れ親しんだ従来の方法を変えることや、デジタル機器自体に抵抗感を持つ人も少なからずいたのです。そこで、システム会社さんに相談し、「Care-wing」の機能を当社にとって必要なものだけに絞ってインターフェイスをぐっとシンプルにしました。そしてヘルパーに1台ずつスマートフォンを貸与し、リテラシーレベルに合わせたグループ説明会を開催。操作を体験してもらうことで、「意外と簡単」「これなら手書きよりラクかも」という納得感や理解を得ていきました。今では在籍ヘルパー61名全員が「Care-wing」を使いこなし、もはやこれがないと業務にならないくらい全社的に普及しています。 しかし、DXは「ITツールさえ導入すれば達成される」わけではありません。継続的に改善していく取り組みも必要です。たとえば「Care-wing」の「水分摂取」の項目はもともと「摂取した/しなかった」の2択でしたが、ヘルパーの声から「水分摂取量」に変更し、かつ最小量を5mlから選択できるようにカスタマイズしました。こうした細かな要望への対応力も、システム会社選びの基準の1つになると思います。 私たちが次のステップとして思い描いているのは、蓄積したデータを地域包括ケアに生かすこと。買い物やペットのお世話、電球の取り替えなどの小さな困りごとを、事業所の枠を超えて地域住民同士で支え合えるような仕組みが作れたらいいですね。当社のチャレンジはこれからも続いていきます。(佐藤未来さん、大野朋子さん)
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日建ヘルスメディカル 株式会社(グレード2)
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