女性介護職員のワーク・ライフ・バランス

もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

社会福祉法人 北晨 特別養護老人ホーム パサーダ
施設長 杉野絵里さん
事務長 西川郁夫さん

外国人材の受け入れに岐阜県内でいち早く取り組んだ先進施設。2010年からのべ31名を採用し、多様性を現場の活力にしてきました。外国人材に対しては、日本語習得や介護資格取得の支援などを専門的に実施し、これまでに8名の外国人介護福祉士を輩出しています。

はじめに

介護現場に頼もしい力~外国人材が活躍する施設を訪ねて~

65歳以上の高齢者が29%を超える岐阜県。介護現場は人材不足が深刻で、2025年までに毎年約1,000人の介護職員の増加が必要とされています。そのようななかで、担い手として期待されるのが外国人材です。従来の「EPA(経済連携協定)」「在留資格 介護」「技能実習制度」に加え、2019年4月から新たに「特定技能制度」が始まり、外国人材受け入れ拡大の気運がさらに高まっています。
大垣市の特別養護老人ホーム「パサーダ」を訪れると、インドネシア出身のアイニさんが「おいしいですか」と、流ちょうな日本語で利用者に話しかけながら食事介助をしていました。イスラム教徒の女性が身につけるジルバップを頭に巻いています。ベトナム出身のリエンさんは、パサーダで働きながら日本語と介護資格の勉強を重ね、日本語能力試験最高峰のN1を取得。このほど、介護福祉士国家試験にも挑戦しました。
パサーダは外国人材の受け入れを2010年から行っており、これまでにインドネシア、ベトナム、カンボジアから、のべ31人を採用。「外国人材を、単なる日本の労働力のアウトソースにしてはいけない」という考えのもと、日本語学習や資格取得の支援を専門的に実施しており、N1・N2といった日本語能力試験の上位等級や、介護福祉士国家試験の合格者も多く輩出しました。施設長の杉野絵里さんは「今や、彼らの力は欠かせません」と語ります。

きっかけは、地域貢献としての国際交流

当法人が初めて海外から介護職員を受け入れたのは、EPAの制度が始まって3年目の2010年。「地域貢献活動の一環として国際交流を」という思いから始めた取り組みでしたが、以来、ほぼ毎年、EPA介護福祉士候補者や介護技能実習生を受け入れていて、現在では全介護職員のおよそ1/3にあたる16名が外国人材です。1施設でこれほど多くの外国人材が活躍している事業所は珍しいそうで、「外国人材活用のモデルケース」と言っていただくようになり、視察のお申し込みも増えました。
パサーダを視察された方は、外国人職員が現場にごく自然に溶け込み、日本人職員と同等に業務を行っている様子を見て、一様に驚かれます。きっと、外国人材の受け入れに興味はあっても、言葉や文化の違い、利用者様との関係づくりなどの面で不安を抱いておられたからでしょう。そんな時、私はいつも「案ずるより産むが易しですよ」とアドバイスさせていただいています。
かく言う当施設も、最初からうまくいったわけではありません。外国人材の受け入れを始めたばかりの頃は、彼らに対して過剰に気を使い、夜勤を免除するなどしたことで、現場の混乱や不和を招いたこともあります。どうしたらうまくいくか、試行錯誤の末にたどり着いた答えは「外国人だから、日本人だから、と区別しないこと」でした。仕事のモチベーションや能力、置かれた環境は人それぞれ。個々の事情に寄り添い、サポートしていくことが大切なのです。習慣・文化・宗教など、理解すべき事柄が従来より多様になるというだけで、職場づくりの本質は変わりません。今、振り返ると、外国人材にとって働きやすい環境を整えることは、誰もが働きやすい環境にするチャンスでもあったと思います。(杉野絵里施設長 談)

外国人材に選ばれる施設になるために

10年前は珍しかった介護現場の外国人材ですが、人材不足の影響で近年は「売り手市場」の状態が続いています。言いかえれば、異国出身の彼らが日本の受け入れ施設を「選ぶ」時代になりました。
外国人材に選ばれる施設になるためには「生活」「学習」「業務」という3つの側面からのサポートが欠かせません。当施設では受け入れにあたって、生活面では「職場の近隣に寮を用意する」、学習面では「日本語と介護の勉強に集中できる専用の学習室を準備し、専任講師による就業時間中の学習プログラムを月に最大50時間確保する(EPA外国人介護福祉士候補者のみ。技能実習生などについては希望者に適宜対応)」、業務面では「教育担当の職員が常に現場でフォローする、仕事の指示や依頼は明確な言葉で伝える」などの取り組みを行っています。また、メンタルケアにも注力しています。
外国人材が孤独な気持ちにならないよう、定期的な面談を行ったり、日本人職員も交えた食事会や旅行を企画したりと、積極的に交流の機会を設け、相互理解に努めています。
外国人材の受け入れ・定着が進むにつれ、現場ではうれしい変化が起こりました。異国の地で志を持って一生懸命働き、学ぶ彼らの姿に刺激を受け、日本人職員の士気もアップ。介護福祉士の資格取得に挑戦する人が増えるなど、結果として現場が活性化していったのです。
今後の課題は、外国人材にも長く活躍してもらえる環境づくりです。実は今、育児休暇を取得して母国に帰国中の外国人女性介護福祉士がいて、彼女の復職や、仕事と家庭の両立を事業所としてどのように支援していくか、思案しています。こうしたケースをはじめ、今後は外国人材に、よりパーソナルな対応が求められるようになるでしょう。私たちはそれらの取り組みをさらなるダイバーシティ推進の契機ととらえ、組織の持続的な成長を目指したいと考えています。(西川郁夫事務長 談)

介護現場で外国人材を受け入れる仕組み 介護現場で外国人材を受け入れる仕組み

EPA(経済連携協定)

日本の介護施設等で就労・研修をしながら、介護福祉士国家資格取得を目指すもの。インドネシア、フィリピン、ベトナムから受入れを行っています。在留期間は最長5年ですが、介護福祉士資格を取得すれば永続的な就労が可能となります。

在留資格 介護

「留学」の在留資格により入国し、介護福祉士養成施設で2年以上就学した後、介護福祉士資格を取得することで得られる在留資格。在留期間は最長5年ですが、更新回数に制限がなく、永続的な就労が可能です。

技能実習制度

外国人を日本の産業現場に一定期間受け入れ、OJTを通じて技能や技術等を学んでもらい、母国の経済の発展に役立ててもらうための制度。在留期間は最長5年ですが、技能実習を3年修了すると、特定技能1号へ移行することができます。また、介護福祉士の資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、永続的な就労が可能です。

特定技能制度

外国人材の受け入れを拡大するため、2019年4月1日に施行された制度。人材確保が困難な14分野(介護・建設・農業など)において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れるもので、在留期間は最長5年ですが、介護福祉士の資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更して、永続的な就労が可能です。

外国人材の受け入れに関する相談窓口 外国人材の受け入れに関する相談窓口

中部学院大学 地域・産学連携課内 外国人介護人材相談窓口

外国人材の受入れに関心をお持ちの介護事業者の方や、日本語で会話ができる留学生・外国人労働者の方などを対象に相談を受け付けています。
詳しくはこちら

社会福祉法人 北晨 (グレード2)
特別養護老人ホーム パサーダ

岐阜県大垣市北方町2丁目70-1

TEL:0584-78-2984
FAX:0584-78-2975

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