介護業界のイメージを前向きに変えていきたい 介護の仕事「魅力とやりがい」

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岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

社会福祉法人 大垣市社会福祉事業団
事務局課長 臼井 亮さん
事務局働き方改革等担当課長 和田 美里さん

大垣市社会福祉事業団では、職員が状況に応じて柔軟に働き方を選択し、安心して働き続けられるよう多彩な支援制度を整えています。これらの取り組みが認められ、2015年度には「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」に、そして2019年度には「ぎふ・いきいき介護事業者」のグレード1に認定されました。

実際の働く環境は? ~制度面~

介護の仕事はそのハードさが話題になることが多く、ネガティブなイメージを持たれがちな業界です。しかし、実際に介護業界で働いている人たちからは「やりがいがある」「楽しい」「思ったより休日も多く、給与面もわるくない」という声も聞こえてきます。
誤解されがちな介護業界の本当の姿について、制度面や実際の現場の雰囲気、将来性などを見通して、興味を持っていただけるとうれしいですね。
まずは制度についてお話します。昨今とても注目度の高い育児休業ですが、私たちの事業団では産休後3年間取得できます。また短時間勤務の選択も可能で、保育園などに預けながらしっかりと仕事と両立できます。やはり長く勤めていただくためにも必要な制度だと感じていますし、現在係長級などの役職に就いている方は、育児休業から復帰し、働き続けることが多くなっています。
一方、男性の育児休暇については、取得実績はあるものの、なかなか育児休業まで取得する方は少ないですね。これは職場の勤務状況などを入念に調査したり、男性職員の意識づけとなるような研修や、働きかけをしながら、積極的に育児休業が取得できるようにしていく必要があります。
毎日の勤務体系としましては、365日対応する入所施設を運営していますので、早番・日勤・遅番・夜勤が基本です。1か月単位でシフト制が組まれており、希望休暇も月に2~3日は取得することができます。夜勤の場合は翌朝9~10時で勤務が終了し、翌日は休日になることが多いです。育児中のお母さんやお父さんからは、送迎や行事の参加がしやすいといった声も聞かれます。平日に自由に動ける休みが取れることは、介護職の強みの一つですね。
また、国が定めた制度により、介護施設には処遇改善手当が加算されますので介護施設が加算を取得すると、職員には基本給に加えて、その手当も支給されるのです。さらに2019年10月には特定処遇改善加算という制度もスタートしました。他業種にはない国から認められたしっかりとした制度があり、それに基づいた手当が充実していることは、非常に魅力的だと思いますよ。
仕事の評価制度では、当事業団では年度当初に目標を立て、年度末にその目標の反省をしてもらう人事考課を年1回実施しています。規定に基づいた昇給制度もあり、現在は女性の管理職も多く活躍しています。また、全職員がやりがいをもって能力を発揮するために、職員研修の実施も欠かせません。新人だけではなく階層別に行い、内容も専門的なことばかりです。介護業界全体でもそうですが、事業団独自で「職員研修要綱」に基づき、職務や経験年数など職員のステージに応じた内部・外部研修への参加を積極的に行うなど、職員のキャリアアップを支援する取り組みが進んでいます。

実際の働く環境は? ~職場の雰囲気・実態、そして心のケア~

介護職は、基本的に人と接する仕事です。施設では利用者様と触れあうことが多く、職員も利用者様と一緒に笑顔になれます。職員からの声で必ず上がってくるのが、『「ありがとう」という言葉を言ってもらうと笑顔になれる』。介護職を続けている職員たちは、この「ありがとう」という言葉があるからこそ続けられてきている、と言っても過言ではないでしょう。その言葉で奮い立ち、励みになるのです。
育児休業についてですが、当事業団での取得率はほぼ100%です。産休に入る職員と面談をすると「2~3年を取得の目安に考えています」と、産休・育休取得後の職場復帰を前向きに考えている方ばかりです。そして「育児を十分に楽しんでから、また仕事に復帰します」と伝えてくれます。また、「子どもが大きくなって子育てもひと段落したので、仕事に専念できます」という方もいて、育児と仕事の良いスパイラルになってきている実感があります。
現在、課長級クラスで女性が2名、係長では約15人いますが、前述のように育児と仕事を上手に両立させてきた職員が増えてきている結果だと捉えています。また、年を重ねると今度は両親などの介護の問題が出てきます。実際、私も自分の母を介護しています。育児だけではなく介護に関する休暇なども充実しており、時間単位や年に5日まで取得できる介護休暇もあるので、長く安心して働ける環境が整っています。
また、2019年4月から有給休暇を年度5日取得することを必須としたところ、職員同士で譲り合いながら計画を立ててくれたおかげで、12月までに全職員が5日間取得することができました。
さらに、事業団独自の「くるみん休暇」という年間2日の休暇もあります。これは、各施設の職員が選任され、業務の課題や休暇の取得率の課題を行動計画委員会という会議の場で話し合っております。その結果、「名称をつければ取りやすい雰囲気になるのでは」という発案があり、制度化したものです。トップダウンでこうしましょうということではなく、実際に働いている職員からの声を吸い上げて制度化したという例です。休暇制度など働きやすい職場づくりに向けて、職員から活動できることも魅力の一つです。
私は“働き方改革等担当課長”として、事業団のジョブサポーターを担当しています。月1回を目安に各施設を訪問し、実際に働いている職員の仕事に対する不安や悩みなどを傾聴させていただいています。職員1人あたりは30分から1時間ほど。大切にしていることは、十分に話を聞くこと。答えを出すことが目的ではなく、不安や悩みに共感することを心掛けています。皆さん話し終えた後は、すっきりした様子で、表情もやわらいでいます。
また、ジョブサポーターは“ジョブ携帯”という相談専用の携帯電話を所持しています。月1回の訪問まで待てない、今聞いてほしいなど、少しでも不安に思うときや悩みがあるときに連絡できるように、電話は24時間対応するようにしています。
職員が介護施設で長く働くためには、考えていることをためずに吐出し、悩みを共有できる環境にすることが重要です。介護職では喜びの面もありますが、不安の面は気軽に相談できる窓口を設置したりして支えていくことが必要だと考えています。

介護業界が抱える今後の課題と将来性

介護職として長く働いてきた方は、高い技術やノウハウは身に付いていても、仕事に対する固定概念があるかもしれません。それに比べると若者のほうが柔軟性があると思います。ベテランがどれだけ若者の意見を聞き入れられるか、その姿勢がすごく大事です。新しい意見としてどんどん取り入れ、いままでの意見と融合させたうえで、これからの時代に合う介護や支援に取り組んでいかなければなりません。
また、育児休業や有給休暇、昇級昇格などの制度も、時代の流れに沿った内容をどのように取り入れ、制度を整えていくのは会社の役目です。ただ、それを上手に執行していこうと思うと、職員同士のコミュニケーションがしっかりできた職場の雰囲気づくりも重要だと考えています。さらには、一人ひとりのスキルアップも必要です。例えば5人でやる仕事が4人になってもできるようにスキルアップをしていかないと、休暇や休業を取得しにくくなってしまいます。業務に影響がないようにしていくためには、制度の整備とともに職員側の業務改善する意識も必要だと考えています。
最後に介護職を目指す学生に言いたいことは、「働く前に職場に行くこと」。期待も不安もある介護職だからこそ、どんな雰囲気なのか、現場に行くと感じることができますよ。また、施設の職員はおせっかいな方が多いです。“人に何かをしてあげたい”という気持ちがある人のほうが、介護職に向いているのではないでしょうか。

具体的な制度

ジョブサポーター

事業団職員が抱えるさまざまな悩みや思いを受止めるための相談員
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特定処遇改善加算

2019年10月に制定された、介護職員に対する新たな制度
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社会福祉法人 大垣市社会福祉事業団
(グレード1)

岐阜県大垣市牧野町2-150-1(お勝山ふれあいセンター内)

TEL:0584-71-3918
FAX:0584-71-4191

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