岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。
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お話を伺った方
介護労働安定センター岐阜支所コンサルタント
社会保険労務士
増田信彦さん平成9年に大垣市で社会保険労務士 増田事務所を開業。メンタルヘルス法務主任者を有する産業カウンセラーとして、年間20社ほどの企業でラインケア・セルフケア研修講師を務めています。平成24年からは、介護労働安定センター岐阜支所の委嘱コンサルタントとして、介護福祉施設の人材育成やヘルスケアをサポートしています。
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労働者の6割が不安やストレスを抱える
近年、職場におけるメンタルヘルス不調を抱えた方が増えています。「メンタルヘルス不調」の症状には、うつ病のほか、統合失調症、アルコール依存症、躁うつ病(双極性障害)などが挙げられ、仕事のパフォーマンスが低下したり、勤務そのものが難しくなったりと不調の具合はさまざまです。うつ病の場合は一般的に、“自分が悪い”“会社に迷惑をかけてしまっている”と、自分を否定してしまうことが多いのですが、最近は「新型うつ」と呼ばれる、“自分がこうなったのは上司のせい”“会社が悪い”と、責任転嫁する例も。新型うつは若者に多いとされ、会社では不調でも家では気分が元に戻るため、家族が気づきにくいのも特徴です。
このような状況を受け、厚生労働省では5年に一度、「労働者健康状況調査」を実施しています。平成24年度の調査結果では、仕事で強い不安やストレスを感じている労働者が6割にも及んでいることがわかりました。さらに国内では、平成10年から平成23年まで14年連続で自殺者が3万人を超えており、平成28年は約2万2千人という状況です。自ら命を絶たれる方の多くがメンタルヘルス不調を抱えているといわれていることから、職場における対策は重要です。
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セルフケアから始めてみましょう
メンタルヘルス不調者が増えた原因のひとつに、「雇用形態の多様化」が挙げられるでしょう。正規雇用者と非正規雇用者がいっしょに仕事に取り組むため、不安やストレスが生まれやすい。それに加えて「人間関係の希薄化」「個人主義の横行」なども要因かもしれません。また厚生労働省が公表した「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談コーナーに寄せられた相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが5年連続トップという点も見逃せない結果です。平成23年には、国が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を策定し、パワハラやいじめをきっかけにメンタル不調になったとする労災認定も増えています。
仕事でストレスを抱えたときには、セルフケアをおすすめします。例えば厚生労働省が開設している働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』には、心の健康を確保するための有益な情報が掲載されています。「15分でわかるセルフケア」コーナーでは、最初のステップとしてストレスへの気づきと対処、自発的な健康相談といった知識を学ぶことができます。
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感情労働の時代に事業所も的確な対策を
施設側にも、職員のメンタルヘルスを意識した職場づくりが求められます。労働安全衛生法が改正されて、労働者が50人以上いる事業所では、平成27年から毎年1回、ストレスに関する質問票に働く人が回答し、それを集計・分析する「ストレスチェック」の実施が義務付けられました。機械で測れる血圧と違い、いま自分がどの程度ストレスがたまっているかは、なかなかわかりません。そんなとき、ストレスチェックは自分の状態を知るのに最適です。平成29年6月末時点で、対象事業者の82.9%がストレスチェックを実施、そのうちの78.0%の労働者がストレスチェックを受けました。しかし集団分析に至ったのは78.3%、医師による面接指導を受けた労働者は0.6%ということで、分析から医師までの流れをしっかりと作ることが今後の課題と言えそうです。
また、労働安全衛生法では、50人以上の事業所では安全衛生委員会の開設や、医師の中から産業医を選任することも義務付けられています。50人未満の事業所には義務付けられていませんが、産業医などについては、各都道府県にある産業保健総合支援センターに相談するのも一案です。
社会保険労務士のなかにも、メンタルヘルスに関心をもっている人が増えています。企業経営においては、労働者に就業契約などを遵守させる「労働契約の履行」と、労働者の安全と健康に配慮する「安全配慮義務」のバランスをとることが大切ですが、社会保険労務士は日ごろからそのような事案を取り扱うため、的確なアドバイスが得られるでしょう。
かつての「肉体労働」は、「頭脳労働」に変わり、現代は「感情労働」の時代と言われています。人と接する介護の現場は、時に自らの感情をおさえて仕事にあたることも少なくありません。事業所の方には、ぜひ職員のメンタルヘルスを意識した職場づくりを心がけていただき、困ったことがあればセンターにご相談ください。 -
介護労働安定センター
高齢社会が進展するなか、必要となる介護労働力の需要増大に対処するため、介護労働者の雇用管理の改善や能力の開発・向上などを図るための総合的支援機関として平成4年に設立。事業者に対して、雇用管理に関する相談や情報提供を行っています。
詳しくはこちら産業保健総合支援センター
各都道府県に設置され、産業医、産業看護職、衛生管理者などの産業保健スタッフを支援するとともに、事業主などに対し職場の健康管理への啓発を行っています。事業者に対して、産業保健に関する様々な問題について相談に応じるほか、産業保健に関する研修も実施しています。
詳しくはこちら精神保健福祉センター
県民のこころの健康向上と、精神障がい者の福祉増進を図るための専門機関。精神的健康の保持増進を図るとともに、こころの病の予防から社会復帰に至るまでの課題について、専門的かつ総合的に対応しています。
詳しくはこちらこころの耳
こころの不調や不安に悩む労働者や、サポートする家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者などの支援や、有益な情報の提供を目的に作られた、“働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト”。職場のストレスセルフチェックや、ストレスチェック後のセルルケアについて学ぶことができます。
詳しくはこちら-
社会保険労務士 増田事務所
〒503-0941 岐阜県大垣市川口2丁目321番地TEL 0584-88-1945
FAX 0584-88-1457