ワーク・ライフ・シナジーが、サービスの向上へ

もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

アドバンス社会保険労務士事務所
社会保険労務士
介護労働安定センター岐阜支所委嘱コンサルタント
吉田裕里子さん

人事に関する手続き、給与計算のアウトソーシング、労務相談及び将来に向けての提案などを行ない、企業の成長・発展に貢献する事務所。吉田さんは企業の頼れる「かかりつけ医」として、顧問企業の労務管理などを行いながら、岐阜県仕事と家庭の両立支援アドバイザーなどを務めています。

ワーク・ライフ・バランスのメリット

数年前から、労働力人口の減少や価値観の多様化などにより、働く女性が増えました。また、長時間労働による過労死や過労自殺、心疾患、精神疾患の労災件数の増加なども目立つようになってきました。仕事現場では“こんな働き方では長く続かない”“働きたくても育児や家事と両立できない”“男性も家庭に関わる時間がもっと必要だ”といった数々の問題が現れました。そうした状況を解決するために登場したのが、有給休暇を取得しやすくしたり残業時間を削減したりすることで、働く人みなさんが、仕事でも私生活でも豊かさを感じられる「仕事と生活の調和=ワーク・ライフ・バランス」という取り組みです。

ワーク・ライフ・バランスに取り組むことは、経営者にとって多くのメリットがあります。たとえば、多様な人材が活躍することでサービスの幅や質が向上しますし、生活面の充実や成長が仕事面にフィードバックされるほか、職員の満足度が上がれば愛社精神も高まります。こうした相乗効果があることから、ワーク・ライフ・バランスは「ワーク・ライフ・シナジー」と表現されることもあります。

特に介護事業所のような対人支援の現場では、働きやすさが職員の能力発揮に直結し、利用者様へのサービスの質を左右します。利用者様から選ばれるサービス事業者になるためには、職員のワーク・ライフ・バランスの実現が不可欠です。また、職員の採用時に、休日数、希望休の通り具合、有給取得率、残業時間数等などをきちんと説明できれば応募者へのアピールにもなります。

まずは職員の声に耳を傾けましょう

介護事業所がワーク・ライフ・バランスに取り組むには、まず経営者自身がワーク・ライフ・バランスの重要性を認識し、本気で取り組む決意を持つことが大切です。時代の流れでやらないといけないから、認定制度があるから、職員に言われたから、ではなかなか効果が現れません。「利用者第一」と言いますが、本当に利用者様を大切にする事業所は職員のことも大切にしています。職員が疲れきって笑顔もなく辛そうに働いている施設で、利用者様が幸せに過ごせるはずはありません。現場の声を聴きながら経営者・管理者が職員と一緒になって課題を解決していくことが理想です。

まずは職員の声に耳を傾けることから始めてはどうでしょう。たとえば職員の「これが困る」という問題を洗い出してみてください。そのなかで「人が増えれば解決すること」と「人が増えても解決しないこと」に分け、「人が増えても解決しないこと」から対策を考えます。たとえば書類が多い、作業の動線が長いなどです。はじめはなかなか本音を口にしないかもしれません。日ごろから「○○さんおはよう」「早く来てるね」など声かけをして、コミュニケーションを取ることも大切です。

制度や環境が整ったら、それを職員に周知することも忘れないでください。たとえば、タイムカードのそばにワーク・ライフ・バランス専用の掲示板を設けて制度や改善策を告知したり、フロア会議などで議題として取り上げたり。制度を整えると同時に、“使いやすい雰囲気”も整えていけるとより良いですね。

愚痴や不満は改善の第一歩。
職員から提案を

介護事業所はチームワークが大事な職場です。職員の皆さんも、ぜひ「どうしたらチーム全体が良くなるか、施設全体が良くなるか」という視点を持ってワーク・ライフ・バランスについて考えてみてください。たとえば、自分が定時で帰るためには部署全体の仕事が回っていないといけない、自分が休みをとるためには他の人の休みを気持ちよくカバーしてあげないといけない、という具合です。

そして、それを「提案」としてリーダーや管理者に伝えましょう。愚痴や不満は改善の第一歩です。陰で言うのではなく、職場全体を良くするためと、自信を持って発信してください。現場のことは現場で働いている人にしかわかりません。“何とかしてもらうのを待つ”よりも、自分たちで改善した方が早いですし、きっと今までよりもっと職場が好きになるでしょう。

介護事業所のなかには、職員に休みたい日の希望を聞いてシフトを組んでいるところも多くあります。私がおすすめしたいのは、自分のために使う休日を設けることです。子どものため、家族のために休みや有休を使う方が多いと思いますが、疲れが溜まっているかなと思ったときに休みを取ることも大切です。自分で休日や時間を管理できれば、メリハリのある働き方ができるのではないでしょうか。

介護職はとてもやりがいのある仕事です。ワーク・ライフ・バランスに取り組んで働き方や職場環境を整え、介護業界全体の魅力をアップしていきましょう。

ワーク・ライフ・バランス、働き方に関する相談窓口

岐阜県社会保険労務士会 総合労働相談所

働きやすい職場環境を整備し、職員さんが楽しく力を発揮できるよう社会保険労務士会がお手伝いしています。「もっとよくしたい」「困っていることがある」等、気軽に問い合わせを。

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岐阜県女性の活躍支援センター・男女共同参画プラザ

女性が子育て・就労・介護などの課題と向き合い、キャリアビジョンを描き、実現できるようキャリアカウンセラーがマンツーマンで「伴走型サポート」を行っています。キッズスペースがあり、お子さん連れでお仕事などの相談ができます。

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アドバンス社会保険労務士事務所

〒500-8463 岐阜県岐阜市加納新本町4-4

TEL 058-213-6622
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