コロナ禍でも「学びを止めない」。介護福祉士養成施設の取り組み。

もっと介護職の話をしよう もっと介護職の話をしよう

岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

サンビレッジ国際医療福祉専門学校
介護福祉学科 教員 和久井愛先生(写真中央)
岡本莉子さん(介護福祉科2年生・写真左)
森公希さん(介護福祉科1年生・写真右)

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、教育現場でどのように授業を展開していくのか、模索が続いています。実習や実技の科目のウエイトが高い介護福祉士養成施設も例外ではありません。感染リスクを抑えつつ、教育活動の質を維持するために、どのような工夫が行われているのでしょうか。岐阜県揖斐郡池田町にある「サンビレッジ国際医療福祉専門学校」を訪れ、「新しい生活様式」を踏まえた「新しい学びの姿」を取材しました。

急ピッチで準備を進めたオンライン授業

2月上旬、サンビレッジ国際医療福祉専門学校 介護福祉学科では、1年生が喀痰吸引の実習に取り組んでいました。今春巣立つ2年生は全員が介護福祉士国家試験に合格見込みで、1年生は先輩たちに続こうと互いに高め合っています。以前と異なるのは、感染症対策のために、教室や廊下の窓を開けて十分な換気をしていること、こまめに手指や器具のアルコール消毒をしながら3名ほどの少人数でグループワークを行っていること。同校では昨春、新型コロナウイルスの影響でやむなく臨時休校を実施しましたが、すぐに4月20日からWeb会議ツール「Zoom」を用いたオンライン授業を開始し、5月19日以降は感染拡大防止に配慮しながら対面授業や校外実習を行ってきたといいます。
「新学期がスタートできない異例の事態に、当校でも対応に追われることとなりました。全職員が共通して抱いていたのは『学びを止めてはいけない』という思い。すぐに学科の公式LINEグループを作って学生たちとのコミュニケーションを図り、ICTが得意な教員にZoomの使い方を教えてもらいながらオンライン授業の準備を進めました。スピード重視だったので、走りながら考える…という感じでしたね」と、和久井先生は当時を振り返ります。新たに導入されたオンライン授業に、学生は自宅からパソコンやタブレット、スマートフォンで出席。教員は学生がいない教室で、パワーポイントの画面を共有しながら授業を進めました。和久井先生は「授業時間数の確保だけでなく、質も落とさないようにと皆で考えた」と言い、パソコン画面に表示される学生の顔を見ながら意識的に問いかけたり、チャット機能を活用して小テストを行ったりと、工夫を重ねたそうです。


▲「人に寄り添う仕事という介護職の本質を、学生たちにしっかりと伝えていきたい」と和久井先生。

コロナ禍で高まった学生の職業意識

対面授業と校外実習を早々に再開したのは「介護福祉士になるために必要な知識や技術をオンライン授業だけで習得することは難しい」と判断したから。「少人数制の専門学校だからこそ実現できたことかもしれません。再開にあたって、最も重視したのはやはり感染予防対策。マスク着用や3密の回避といった基本的な対策はもちろん、学生に日々の行動記録を付けてもらったり、毎日の体温と体調を確認し、報告してもらったり、実習に入る2週間前からアルバイトを控えてもらったりと、最大限の努力を重ねてきました。そうした取組みが結果的に、学生一人ひとりの『介護職は人の命を預かる仕事』という意識を高めることにつながったと感じます」と和久井先生。
最後に「アフターコロナ」を見据えた介護福祉士養成施設の役割について聞いたところ、次のような答えが返ってきました。「学校がより柔軟な教育の場になっていけば良いと思っています。今回の経験で、ICT環境の重要性に改めて気づき、また直接会うということの尊さも再確認しました。学校にとって何より大切なのは、学びの量と質を確保すること。そのために私たちはこれからも全力を尽くし、学生たちが確かな知識や技術を得て社会へ羽ばたけるようサポートしていきたいと思います」。
和久井先生の言葉からは「どんなことが起きても、学生たちの学びを止めない」というサンビレッジ国際医療福祉専門学校の熱い思いが伝わってきました。


▲ICT環境が整ったため、大雪の日もオンライン授業に切り替えた。


▲6月2日、入学式に代えて行われた「新入生を歓迎する会」の様子。

在校生の声

1年生 森公希さん(写真左)

中学生のときの職業体験がきっかけで介護福祉士を志しました。その思いは高校生になっても変わらず、サンビレッジが主催する学校見学バスツアーやオープンキャンパスに参加して「勉強するならここがいい!」と直感。入学を決めました。
ところがコロナの影響で入学式も中止に。この先どうなるんだろうと思いましたが、すぐにLINEとZoomを使ったクラスメイトとの交流やオンライン授業が始まり、安心しました。
本格的に通学できるようになった6月からは、学業と介護施設でのアルバイトを両立させながら、初めてのひとり暮らしにも挑戦。充実した毎日を過ごしています。
介護の学びで一番楽しいのは実習。「こういう風に体を使えば、介助する人もされる人も負担が少ないんだ」などの発見が毎回あります。そして気がつけば、介護福祉士を目指す学校生活は折り返し地点を過ぎました。学校に通って勉強するという「当たり前の日常」への感謝の気持ちを忘れず、来年1月の国家試験に向けて努力していきたいです。

2年生 岡本莉子さん(写真右)

1月末に介護福祉士国家試験を受験して、自己採点の結果、一緒にがんばってきた同級生全員が合格見込みとわかり、ホッとしています。受験直前の時期は、授業がない日も学校に来て、自習に励みました。感染予防対策を考えて私たち2年生専用の入り口や自習室を準備し、苦手なところを克服できるようにサポートしてくださった先生方には感謝しかありません。
振り返ると、サンビレッジで学んだ2年間はあっという間でした。昨春は「新学期が始まったのに学校に行けない」という初めての事態を経験。突然のことに戸惑いましたが、Zoomを使ったオンライン授業は思っていたよりも受けやすく、楽しいと感じました。でも、やっぱりみんなと学校で直接会って話すことで得られる発見やつながり、学びは多くあります。コロナ禍は私にそんな気づきを与えてくれました。
卒業後は、実習でお世話になった介護施設に就職する予定。ここで得た一生ものの資格と絆を生かし、さまざまな経験を重ねながら介護のプロとして成長していきたいと思います。

サンビレッジ国際医療福祉専門学校

岐阜県揖斐郡池田町白鳥104番地

TEL:0585-45-2220
FAX:0585-45-0188

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