家族をつなぐオンライン面会。コロナ禍をきっかけに普及

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岐阜県の介護業界の未来を担うのは、
志を持った学生、現場で働くプロフェッショナルのみなさんの存在です。
そうした方々に着目し、あらゆる角度から、
介護の仕事と学びについて考えていきます。

お話を伺った方

社団医療法人かなめ会 山内ホスピタル介護老人保健施設
統括部長 真野芳宏さん
教育担当責任者 介護福祉士 仲本麻美さん

新型コロナウイルスの集団感染を防ぐため、重症化リスクの高い高齢者の方々が入居する多くの介護施設で面会が制限される状況が続いています。そんななか、新たなコミュニケーション方法として注目されているのが、タブレット端末などを利用した「オンライン面会」。どのような効果が期待できるのでしょうか。介護現場における「ウィズコロナ時代の今」を取材しました。

直接面会に代わる交流方法を模索

4月23日から、オンライン面会を導入している岐阜市の山内ホスピタル介護老人保健施設。70代から90代まで、65人が入所する同施設は2月下旬に面会を中止しましたが、入所者の方々やそのご家族から「会えないのが寂しい」「体調が心配」「認知症が進んでしまうのでは」といった不安の声が上がり、導入を決めたといいます。

1階の「地域交流ホール」と入所者の個室にそれぞれタブレットを設置して無料ビデオ通話アプリ「LINE」でつなぐ方法のほか、自宅にインターネット接続環境が整っている場合、予約制で個人のスマートフォンやタブレットと入所者の個室をつなぐことも可能。同施設を運営する社団医療法人かなめ会の真野芳宏統括部長は「面会交流ができなくなるという急激な環境の変化で、落ち着きがなくなったり、元気がなくなったりした入所者様もいました。何か良い方法はないか模索していたところ、4月上旬にオンライン面会の取り組みについて紹介されているニュース番組を見て、これだと思ったのです。ルール作りやご家族への周知など、大変な作業もありましたが、職員の一致団結によってスピーディーに導入することができました」と振り返ります。

リアルタイムの映像と声で安心感

「久しぶりだね。腰痛の具合はどう?何か困ったことはない?」。取材当日、オンライン面会に訪れたあるご家族が、タブレット端末に映る入所者の方に手を振りながら話しかけていました。「いつも手紙ありがとう。顔が見られてうれしいよ。元気にやっているから安心してね」。画面越しに朗らかな笑顔で答える入所者の方。その様子に、ご家族が安堵の表情を浮かべます。

離れて暮らす高齢の家族と直接会えなくても、リアルタイムの映像と音声で伝わる思い。コロナ対策が長期戦になることが予想されるなか、オンライン面会は、入所者と家族をつなぐ貴重なコミュニケーション方法となっています。

山内ホスピタル介護老人保健施設では、9月14日から1家族あたり週1回などの条件付きで面会が再開されましたが、オンライン面会は継続する方針。真野さんは「実際に取り組んでみると、オンライン面会にはいろいろな可能性があることがわかりました。たとえば遠方に暮らすお孫さんの顔を見せるといったこともでき、入所者様にとって大きな喜びや励みになります。今後も施設として何ができるのかを常に利用者様とご家族の視点で考え、よりよい介護サービスを積極的に導入していきたいです」と意欲を見せていました。

山内ホスピタル介護老人保健施設でオンライン面会以外に導入または導入予定の感染症対策

  • 全職員のマスク着用、携帯用消毒スプレー携帯
  • リハビリスタッフのフェイスシールド、手袋着用
  • 応接机や食卓などへのアクリル板設置
  • 脱衣室内のカーテン設置
  • ハイブリッドファン設置
  • インカム活用
  • 体位変換付きエアマット活用(床ずれなどを防ぐ体位変換の介助をリモコン操作で行えるため、利用者と職員の身体的接触を減らすことができる)
  • デイケアフロアと入所フロアの徹底したゾーニング(スタッフの行き来の制限など)

介護福祉士の仲本麻美さんの声

コロナ禍を機に導入したオンライン面会。実はご家族もLINEに不慣れな高齢の方が多く、当初は反応が鈍かったんです。でも、職員が電話や対面で使い方を説明するなどして積極的にアプローチしたことで、多い日は1日5組ほどのご家族にご利用いただけるようになりました。今後は誕生日会などのイベントの様子を撮影した動画や画像を入所者様のご家族へ個別に送信するなど、LINEの活用をもっと広げていきたいと考えています。近々、結婚式を予定されているあるご家族からは「おばあちゃんに晴れ姿を見せたいから、式の当日にLINEをつないでほしい」というご相談も。もちろん、喜んでお手伝いさせていただくつもりです。

オンラインだからこそできる手軽できめ細かなサービスは、介護現場にこそ必要なものだと気づかされました。コロナの影響は悪いことばかりではありません。固定観念を取り払い、今後の介護サービスのあり方を考えるきっかけになったと思います。

具体的な制度

新型コロナウイルス感染症対策に関する補助事業について

岐阜県内の介護サービス事業所を対象にした補助金や、職員の皆様への慰労金などについて紹介しています。
詳しくはこちら

社団医療法人かなめ会
山内ホスピタル介護老人保健施設 (グレード2)

岐阜県岐阜市市橋3-7-22

TEL:058-215-1600
FAX:058-215-1601

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